地面の中の血管 2009/11/28
https://www.ohta-geo.co.jp/reports/others/piping.html
踏査をしていると、尾根筋に家がありそこに浅井戸があることがしばしばある。尾根筋なので、地下水が来るとすれば尾根に沿ってくるしかないのだが、なぜか深井戸ではなく浅井戸である。水量も豊富だ。 昔から「水は尾根につく」という言葉があるそうだ。谷には流れる水はあるが、地下水は逆に豊かでないという話も聞く。 崩壊地ではしばしば尾根筋にパイピングホールが観察される。浅井戸の正体は尾根筋に形成されたパイプ流のようである。パイピングホールは、風化の境界部(強風化層と風化層の間の強風化層側)にできていることが多い。風化境界は透水性の境界でもある。 パイプ流は、地中に張り巡らされた血管のようなものである。人間の体の血液が心臓からでて全身に浸み込んでいるわけではないように、雨が地面に入っても一様に浸み込んで流れているわけではない。 パイプ流は普段は地盤に優しい。天然の地下水排除工だ。地中に浸透した雨はパイプに集まり、その大半がパイプを通って斜面外に排出される。この機能によって普段の雨では崩れずに済んでいる。 しかし、豪雨の時は状況がかわる。パイプの処理能力いっぱいの水は、被圧水となり、ものすごい圧力が生じる。その圧力は、パイプ最上部の位置の水頭だから、山が大きいととてつもなく大きい。岩盤でも吹き飛ばせるだけの圧力を持つ。 人体でいえば、血圧が上昇して血管が破裂するという状態に似ているかもしれない。 地震の時には過剰間隙水圧、豪雨の時には巨大間隙水圧、、、水が斜面を壊していくということに違いはない。 |
![]() 2004年新潟県中越地震で発生した崩壊 芋川下流の竜光地区で発生した長距離流動型崩壊 |
![]() 最上部の少し下から、水によって刻まれた筋が見える。最上部の滑落部にはそれが見えない。 左上の方に、落ち残った木があり、その上に小さく崩壊した跡がある。 |
![]() 小さく崩壊した後には、3つの黒い穴が写っている。どうもここから水が噴き出したようだ。 |
![]() さらに拡大すると、穴が穴らしく見えるようになってきた。 これ以外にも数か所パイピングホールらしき穴が滑落面上部に存在する。 |
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